ナイアガラの滝を「感じたい」なら、風の洞穴(Cave of the Winds)

 

もうすぐ夏がやってきますね。夏休みに遠くにお出かけされる方も多いのではないでしょうか。東海岸に住む人なら、必ずと言っていいほど一度は訪れるのが、ナイアガラの滝でしょう。ナイアガラまでは、車でのんびり8時間ほどドライブしても行けるし、飛行機なら1時間半ほどで着いてしまいます。ニューヨークからの早朝出発・日帰りツアーなんかもあるそうですが、しかし日帰りとはもったいない!!ナイアガラはいろいろ楽しみ方があるので、じっくりと味わっていただきたいものです。

ナイアガラには滝が3つ、カナダ側にカナダ滝、アメリカ側にアメリカ滝とブライダル・ベール滝があります。この中で一番大きなカナダ滝は幅約670m、高さ約54mもあり、一分間に1億5500万リットルもの水が流れているそうです。カナダ側の滝の周りには、ホテルやらカジノやらアミューズメント施設やらがたくさんあります。特にクリフトン・ヒルと呼ばれる場所(Falls Ave.からVictoria Ave.まで)は繁華街になっていて、アイマックスシアターから蝋人形館、お化け屋敷におみやげやさんまで、何でも揃っているので、まぁ退屈することはありません。一方のアメリカ側は滝周辺は国立公園となっていて、あまり観光地化されていないので、カナダ側と比べるとかなーり地味です。だからナイアガラに行く人は、大抵カナダ側のどこかのホテルに滞在し、カナダで滝を見物し、近所の観光地にもちょっと足を伸ばして帰るのがお決まりのようです。

我が家もそうでした。アメリカに来て1年目、車でナイアガラを目指してドライブ。バッファローに入ってから遠くにもうもうと見える煙が、滝の発する水しぶきと気がついたときには、そのスケールの大きさにたまげたもんです。そしてカナダ滝の展望所では、滝から離れたパーキング近くまで、水しぶきが霧のように漂っているのにまたたまげました。さらに滝つぼに落ちる寸前のところを眺めて、その水量の多さに魂まで吸い取られそうになりました。霧の乙女号に乗ったら、天気がちょっと悪かったためものすごく船が揺れ、水がざばざば船の中に入ってきて、この世の終わりかと思いました。ついでにビハインド・ジャーニー(カナダ滝の裏側に行けるツアー)も行って、いやぁナイアガラってやつははすごい!と感動して帰ったもんです。しかしそれだけではまだ、「ナイアガラ経験」は足りなかったのです。

去年の夏、両親がアメリカに遊びに来たので、再びナイアガラに行こうか、という話になりました。飛行機でトロントまで行き、レンタカーを借りてナイアガラまでドライブし、一泊して帰る、というプランでした。その話をナイアガラから帰ったばかりの友人Aにしたところ、Aは「よしみさん、ナイアガラに行くんやったら、アメリカ側の『風の洞穴』が一番おすすめよ。子どもが一番喜んだのがこれ。もうね、びちゃびちゃよ」と、笑いながらアドバイスをくれました。び、びちゃびちゃ?でもビニールのかっぱ(霧の乙女号などのアトラクションに参加すると、体が濡れるのを防ぐためにビニール製のかっぱがもらえる)をくれるんじゃないの?霧の乙女号よりもさらにすごいのか?などという不安を抱きながらも、そのアドバイスはしっかりと胸に刻みました。

さて、両親を連れてのナイアガラ旅行に出発し(実はこの旅行、飛行機に乗り遅れるなどさまざまなハプニングがあったのですが、ここでは省略)、無事ナイアガラに到着してカナダ側のホテルで1泊。翌日霧の乙女号に乗ってから、アメリカ側に向かうことにしました。レインボーブリッジという橋を渡って国境を越え、アメリカ国立公園のパーキングに車を停め、ビジターセンターへ。そこからさらに15分ほど、アメリカ滝とブライダルベール滝へ流れ込む川を回り込むような形で歩いて、ブライダルベール滝の横にある「風の洞穴(Cave of the Winds)」にたどり着きました(ちなみに、風の洞穴のすぐ近くにパーキングがあることに後で気がつきました)。建物の中に入り、入場料を払うと、ビニール製のかっぱだけでなく、なんと専用のビーチサンダルが一人ずつに配られたのです!そのサンダルはかかとが固定されるようになっており、少々滑るような場所でも大丈夫なつくり。専用のサンダルが配られるということは・・・と嫌な予感を覚えつつ、エレベーターに乗ってブライダルベール滝の滝つぼ近くまで降りました。そして滝に手が届きそうな場所に作られた展望台の下まで、木製の遊歩道を1分ほど歩きました。展望台へは、そこからさらに階段を20段ほど上がってたどり着きます。

しかしその階段の手前で、引率者は「ほれ、行きたい人は行っといで」と言ってそっぽを向きました。えっと思いながら展望台を見上げると、はっきり言って、展望台が水の勢いで、見えない!子ども達は滝のあまりの勢いにびびってなかなか上に行きたがりませんでした。こりゃ引率の人も行かないはずです。私はせっかく来たのだからと、階段を上ることにしました。滑り止めのついた階段を一歩一歩あがるたびに、風圧か水圧か、なんだかよくわからないけれど、嵐のようなものがどわーーっと近づいてきて、目をあけて普通に歩けない!「うおっ、ふぬっ、むおーー!」となにを叫んでいるのかわからない叫び声をあげ、足を踏ん張り手すりにしがみつきながら前に進んでいきました。まるで超大型台風の雨嵐に立ち向かっているみたいな感じ。いったいなんなんだ、これは!と思いながらやっとこさ展望台の一番上に着いたのですが、ドドドドドーッ、バーシャバシャバシャーッという洪水と風圧の中に立っているのが難しく、目を開けることも不可能!思わず「うぎゃーーーっ!」と叫んで、振り向きざまに写真を一枚撮り(後でその写真を見ても水しぶきしか写っていなかった)、吹っ飛ばされそうになりながら慌てて階段を下りました。そして荒い息のまま展望台を振り返ってみると、手で滝をさわったり、滝で髪を洗ったり、滝に打たれて修行したりと、そりゃもうすごいツワモノがたくさんいて、唖然としてしまいました。気がつけばかっぱを着ていたはずの私は全身ずぶ濡れ・・・。

Aさん、あなたの言うことは正しかった。確かにこれはすごい。ほんまに「びちゃびちゃ」になっちゃったよー・・・。

ちなみにブライダルベール滝は幅約15m、高さ約34mで、カナダ滝のデータと比べれば貧弱に思えるかもしれません。しかし!とんでもないのですこれが。「風の洞穴」に行けば、わかります。これを体験せずして、ナイアガラを語るなかれ!

(たんぽぽ2006年6月号)