本気の鉄道模型マニアの館(Flemington)

アウトレットの町フレミントン
フレミントンという町をご存知ですか。ニュージャージーの中部にあって、フォートリーから1時間強、プリンストンから40分程度で行けます。ここはアウトレットモールがあることで有名、といっても中心的モールLiberty Village Premium Outletsの規模は60店舗で、220店舗もあるらしいウッドベリーコモンの三分の一以下と、こじんまりとしたもんです。しかしNJはアパレル・靴がノータックスなのに加え、モール以外でもMIKASAなどのクリスタル、チャイナのお店がこのエリアに集中しているので、奥様方には結構人気があるようです。

ところで「アウトレットモールで買い物したい!」と言うと、大抵お父さんや子どもは「えーーーーっ!」と嫌そうな顔をしませんか?まぁそれは仕方ないかもしれません。お母さんはモールに足を踏み入れた瞬間、家族のことなんて眼中にない!買いたいもの、安くていいものを探すのが最優先、それこそがここに来た目的ですから。一方の家族は、特に見たいものもないところで、いつ終わるともない買い物に付き合わされるのはたまったもんじゃないでしょう。ほらほら、よく見かけませんか?アウトレットモールの片隅においてある、コインを入れたらガッタンゴットンと動く小さな乗り物に何回も子どもを乗せてあやしているお父さん。自動販売機でジュースやアイスを買って、ボーっとしながら子どもと食べてるお父さん。なんともいえない哀愁が漂ってますよねぇ。なんか他に楽しく時間をつぶせる場所があればいいのに、と同情してしまいます。

ところがですよ、このモール近くに子どもだけでなくお父さんも大喜びしそうなスポットがあるとしたら?「じゃあ3時間くらい子どもと一緒に遊んで来るから、キミはゆっくり買い物しておきなさい」とお父さんが率先して行ってくれたら・・・。あぁ、なんと夢のよう!お母さんは心おきなく買い物に集中できるやん!そんな素敵な場所をご紹介しましょう。

小さな張り紙に注目!
Liberty Village Premium Outletsから車で5分くらい走ったところ、Rt.202South沿いにあるのは、鉄道模型の館Northlandzです!看板には、ほんまかどうかわかりませんが、「世界で一番大きな鉄道模型」と書いてありました。まだまだありますよ、本当に乗れるミニチュア機関車があるし、館内にはパイプオルガンが鎮座して生演奏も楽しめる!ドールハウス展示なんかもあるらしい!ね、なんだか面白そうでしょ?

それでは中に入ってみましょう。ひげを生やして帽子をかぶった開拓時代風のおじさんが、受付でにこやかに切符をくれます。スロープを降りるとスナックカウンターがあって、その右側が入り口のようです。さあ出発!と思ったところで、一枚の張り紙を見つけました。

「ここは長いツアーです。小さいお子さんはツアーに入る前にトイレに行っておいたほうがいいでしょう」

は?な、なに?そんなに長いの?どういうことだろう・・・少々不安を感じつつ、入り口を通りました。

そこには写真のようなとても精巧な鉄道模型がどどーんとありました。粗い岩肌の質感、小さな家並の精巧なこと!!素晴らしい景観を縫うように通っているいくつもの線路。そして大きな橋!子ども達は柵の下にちゃんと作られている台の上に乗って、次から次へと走ってくる電車や、風景に見とれています。もうボーゼンとしていると言った方がいいかもしれない。特に下の息子は、顔を模型の地面の高さにおいて、じっと見つめています。きっと彼の頭の中では本当の電車が走っているんでしょう。「次行こう」と言っても子ども二人の耳には全く届いてません。なんとか手綱を引きながら次から次へと見ていくのですが、子ども達は模型のシーンごとに立ち止まって動かない。すっかり魂を吸い取られています。確かに、魂が取られそうです。そびえたつ山脈や切り立った崖などは迫力満点だし、町の様子がとても面白く作られているからなんです。じっと模型を眺めていると、その精巧さがハンパでないことに気がつきます。ただ家をいくつも作っているんじゃなくて、壊れかけた家だとか、工場だとか、遊園地だとか、もういろんな建物があるんです。中でも面白いのは「おばあさんのピット」というもの。山を切り崩すので住民を立ち退かせたら、おばあさんだけ頑として認めなかったので、そのおばあさんの家だけ残して周りを削ってしまったというもの。だから100メートルくらいの岩のタワーの上におばあさんの家だけがぽつんと乗っているようになっていて、おばあさんが避難するために家までわざわざ橋をかけてるんです。「そんなのあらへん」と言いたくなるけど、ここでならあり、というようなミニチュアがいたるところにあるんです。これがすごく面白いんです!さっき切符を売ってくれたおじさんが、模型をせっせと修理しているところにも出会いました。ここの製作者(=切符売りのおじさん)、かなり気合が入っているとみました。

途中でパイプオルガンが並んだホールに出ました。さっき切符売り場でおじさんに聞いたら、あと20~30分で演奏が始まるらしい。それまでには戻ってこれるかな、と思いつつ、また模型のオンパレードに入っていきました。
いくつの風景を見た後でしょうか、ふと柵の辺りを見ると、こんな張り紙を見つけたのです。

「あなたはNorthlandzの25%を過ぎたところにいます」

「な、なにーーーーーっ!!あれだけ見て、まだ25%なんかい!!」
私、本当に日本語で叫んでしまいました。インパクトありすぎです。人目がなければ、「どっひゃー!」と吉本新喜劇ばりにこけてみたかったです。

しかし、この25%地点を越えても、まだまだ模型が続くのです。ここはグランドキャニオンかいな、と思わせるくらいの渓谷に鉄道がいっぱい走ってたり、ジョーワシ(ジョージ・ワシントン・ブリッジ)も真っ青のどでかい橋がかかっていたり、見所もてんこ盛りなのです。まだあるんか、まだあるんか、と思っていると、今度はこんな張り紙を見つけました。

「あなたはNorthlandzの50%を過ぎたところにいます」

「ぎえーーーーっ!!まだ半分もあるんかいな!!」 
再びショック状態。完全にやられました。おじさん、「トイレに行っとけよ」の張り紙は本気だったのね・・・。

この張り紙のある場所は休憩所のようなスペースになっていて、ジュースの自動販売機と椅子がいくつか置かれていました。これは絶対、必要!!と強く納得してしまいました。トイレも入る前に行っておいてよかったぁ!

オルガニストは誰?
しばし休憩のあと後半しゅっぱーつ!後半ももちろん鉄道模型が次から次へと続きます。けれどももう一つの見どころはなんといっても人形コレクションです。通路のところどころに飾られている人形たちが、なんともレトロというか、不気味というか、なかなか他ではお目にかかれないようなものが多いんです。圧巻は手作りのドールハウス。なんと部屋が94室もあるのです!5階建てで、部屋が横に10も20もつながっていて、それぞれの部屋に人が寝ていたり、楽器を鳴らしていたり、プールで遊んでいたりとまぁさまざまなんですが、「こんな家あるんですかい?もしかしてホテル?」と突っ込みたくなるような、不思議なドールハウスです。しかも中に入っている人形がみんな「レトロー」な雰囲気。それから通路の両側一面がガラスケースになっていて、「とびきり」の人形を展示しているところも、なかなか見ものです。

ようやく最終展示までたどり着き、先ほど通り抜けたパイプオルガンのホールへと戻ってきました。木製の椅子がいくつも並んだ、コンサートも開かれそうな立派なホールです。そして正面にはなんと、3つもパイプオルガンが!いったい誰が弾くんだろう?と思っていると・・・なんと!さっき切符を売ってくれて、しかも模型を修理してた、あのひげ面のおじさんではないか!おじさんが軽やかに舞台に駆け上がり、白くて金色の彫刻がゴージャスなパイプオルガンの前にひらりと腰掛けたかと思うと、ボローン、ポロポロピロピロリーン♪と優雅な音楽を始めたではありませんか!・・・う、うまいこの人!指がよく動くし、ペダルを踏む足もめちゃくちゃ軽快!それにしても、このパイプオルガンと、おじさんの風貌と、ミスマッチなのが逆に味わい深い・・・

いや、それにしても、「世界一」はあながち嘘ではないでしょう。後で調べたら、ツアーの全長1マイル(1.6km)だそうです。ほんまにこの規模はすごい!本気です。それからここに来たなら、外のミニチュア機関車にもぜひ乗りましょう。林の中を走る2分の旅はなかなかです。

さあどうですかお父さん、ここでゆっくり楽しんで、ついでにメインストリートかどこかでおやつでも食べれば、じゅうぶん「3時間」は時間をつぶせますよ!

Northlandz
495 Highway 202 South Flemington, NJ 08822
tel: (908) 782-4022 http://www.northlandz.com/
平日10:30-4:30、週末10:00-6:00
大人13.75ドル、子ども(2-12歳)9.75ドル

Liberty Village Premium Outlets
1 Church St. Flemington, NJ 08822
http://www.premiumoutlets.com/outlets/outlet.asp?id=13

(たんぽぽ2005年5,6月号)