Published by Yoshimi on 2005.03.01
気ままにおでかけ/日本でもスンドゥブ編
日本でも、愛しのスンドゥブ
年末年始は、日本に一時帰国しました。そこで、今回の「おでかけ」は番外編とさせていただいて、日本滞在中のお話をさせてください。
日本語耳元こだま体験
アメリカに住むようになってのち、初めて日本に行ったのは2年前、渡米して2年経った頃でした。成田空港に降りたときのことは忘れられません。日本語が、耳の周りでわんわんこだましてるんです!私の住むプリンストンには、フォートリーでいうミツワや大道のような、日本人が必ず集まるするスポットというものが存在しないから、街中で日本語が交わされるのを耳にする機会は極めて低いです。街で「もしやこの人日本人?」と思われる人を見かけても、韓国人だったり台湾人だったり、はたまたマレーシア人だったりするわけです。だから、たまーにミツワに行ったりしたら、「空気中に日本語が飛んでいる」という感じがしていました。日本語がふと聞こえるたびに、耳がとっても敏感なアンテナと化し、素早くその言葉が発せられた方向を察知し、「日本人発見、日本人発見」と心の中でつぶやくのです。そしてそのアンテナでキャッチした日本語を(内容はともかく)聞き漏らすまいと、しばし行動を止めて、空中に飛んでいる日本語をつまみ食いするかのごとく味わうのです。我ながら怪しいなぁと思います。またマンハッタンに遊びに行くと、街中で私の前から横から後ろから、何分かおきに日本語が飛んでくる!「おおおおおぉ、日本語、日本語や、にほんごが聞こえるぅぅ」と感動して声を出してしまい、道行く人に怪しがられました。だから成田空港に降りたときは、それはもう「私の両耳の周りに10人ずつ人がいて、一斉に私が言ってほしいことを口々に言ってくれてる」とでもいえる状態でした。私の敏感な日本語感知アンテナが反応しまくって、あちこちで行われている何気ない会話に耳を突っ込むもんで、かなり疲れました。
在米4年目の日本一時帰国
で、前回の滞在からさらに2年が経過しているから、今回も同じような「日本語こだま体験」ができるのでは、と内心わくわくしていたのですが、関西国際空港に到着しても、「こだま」がしないのです。電車に乗っても、大阪の繁華街に行ってたくさんの人にまぎれても、あの「ウワンウワン」とうなるように聞こえる感覚が起きるどころか、今までもずっと日本に住んでいたかのように、何の違和感もなく過ごしてしまったのです。同じように、2年前には焼肉てっちりから、コンビニの菓子パン、缶飲料に至るまで、口にするものなんでも「おいしー!」と感激し、「アメリカで食べられへんから食いだめーー!」と、気持ち悪くなろうが体重増えようが、無理やりにでも口に突っ込んで絶対に忘れないようにとしていたけれど、今回はそれほど食べ物に執着しなかったのが、私にとって不思議でした。「おいしいよねー、日本で食べれてよかったー、でもまっ、アメリカに帰ってもおいしいものはあるし、何年かあとでまた日本に来たときに食べられるから、それまで待てるな」などと思ってしまったのです。おかしい、これは実におかしい。たぶんそれは、簡単に言うと「アメリカのいいところも十分わかったし、日本ってこんなところだという概念もできあがっちゃった」からじゃないかなと思っています。そんな私の反応は、人をこれでもかとばかりもてなして「おなかいっぱい、ごちそうさん」と言わせるのが何よりの幸せである私の父には、いささか残念だったようです。
日本初のスンドゥブ専門店とはいかに?
そうはいいつつも、しっかり気になる食べ物は押さえてきました。日本一時帰国に際して私はいくつか目標を立てていたのですが(例えば本屋で立ち読み三昧とか、「ハウルの動く城」を見るとか、デパートや地下街をうろうろするとか)、その中の一つに「日本でスンドゥブを食べられる店に行く」というものがありました。これは、なにが何でも味わってこなければ、私はアメリカに帰れない!というほど大事な使命だったのです。そしてアメリカに帰る一日前、ようやくその使命を果たしました。 なぜ「私にとって大事な使命」なのか。まずは「スンドゥブ」について少し説明しましょう。スンドゥブ(もしくはスンドゥブチゲとも言う)とはやわらかいおぼろ豆腐を使い、肉や魚介類、野菜と一緒に石鍋で煮た韓国料理のスープのことで、漢字では「純豆腐」と書きます。このスンドゥブは日本ではほとんどと言っていいほど見かけることはありませんが、本場韓国ではごく普通の食堂でいつでも食べられるほどポピュラーなメニューだそう。それがアメリカにも上陸し、在米日本人の間で人気となりました。NJではフォートリーやエジソンといった、韓国人が多く住む地域でスンドゥブ専門店をいくつか見かけます。私は、いや私の家族はアメリカに来てそのスンドゥブに見事にハマりました。詳しくはたんぽぽ36号の「我が愛しの韓国料理」に書いてありますからここでは省略します(たんぽぽHPでもバックナンバーが読めます)が、スンドゥブはまさに、「アメリカにはサンドイッチとピザと油ギトギトのチャイニーズしかないのか!」という絶望的な思いを見事に消し去り、「日本料理よりも私達を真に慰め、癒す食べ物ここにあり」とまで思わせてくれた、私達にとっての救世主、いや救世食なのです。主人と私は「日本に帰ったらこのスンドゥブを食べられなくなるんじゃないか」と本気で悩みました。自分達が食べるため日本にスンドゥブレストランを作ろうという秘密の作戦まで立てたくらいなのです。それが昨年、ある日本の雑誌を読んでいたら「日本初の韓国豆腐スープ専門店」なるものが大阪にできたとの記事を発見!その実態はいかに、これは確かめてみないとあかん!と思ったのです。
そのお店は大阪の新地という場所にありました。新地とは東京でいう銀座で、高級クラブなどが立ち並ぶところ。しかも堂島などの大阪のビジネス街のすぐ近くです。私は新地には今まで一度も足を踏み入れたことがなかったもので、すっかり道に迷ってしまいました。ようやくたどり着いたそのお店は、細長い2階建て。中に入ると、1階はカウンター席が6席と厨房だけ、2階にはテーブル席が5つほどという小さな店でした。ご主人は「西海岸でスンドゥブを食べて、これは日本でもいける」と開業されたそうですが、客層を見てびっくり。カウンターには女性が何人も座っていて、黙々とスンドゥブを食べているのです。アメリカではファミリーやカップルなど複数で訪れているのがほとんどですが、ここではカウンターに女が1人、新聞などを読みながらハフハフとスンドゥブを食す。ラーメンや牛丼だと女1人でカウンターはきついけど(と言いつつ私は1人でも平気で座れますが)、これが悪くないんですよ。へぇ?と思いつつ、「すんどぅーふ昼定食・(辛さめちゃくちゃ控えめと注文)・豚カルビ焼肉つき(950円)」を注文しました。
出てきたのは石鍋に入ったご飯と、同じく石鍋に入ったスンドゥブ、生卵、小皿に入ったモヤシ、韓国のりのパック、そして豚の焼肉が3枚のった小さな鉄板。まさしくスンドゥブ定食だ。おいしそう!・・・だけど、どれも量が少ないのです。アメリカの半分なんです。ご飯なんて、日本のお茶碗1杯分強しかない。でも、これが日本サイズなんですよね。いかに自分の感覚と胃袋が、アメリカに来てから変わったかを思い知りました(そして体型も・・・おっとそれはまた別の話)。 そして味の方ですが、おいしいです。豆腐も柔らかくてのどごしがいいし、牛肉もエビもカキも入ってて、満足感あります。1人ずつの石釜ご飯もポイント高いし、最後にお茶漬けまでできる。でもあえて言えば、ほんの少し物足りなかった。それはスンドゥブを「ほとんど辛くない」ように作ってもらったからわかったことなんですが、スープがいわゆる日本の韓国料理屋さんのクッパ(五目汁かけご飯)の味なんです。つまり日本人になじみやすく作ったスンドゥブ、という気がしました。でも、アメリカにある普通の韓国料理店で出されるスンドゥブや、マンハッタンにある某スンドゥブ専門店よりは、絶対おいしいと思う! なにより日本でスンドゥブが食べられるのがわかっただけでももうけもの。しかもここは24時間営業!朝には「朝定食」としてスンドゥブ定食が夜の約半額で食べられるし、スンドゥブにうどんや餃子やご飯を入れたメニューもあって、時間のない朝でもさっと元気をつけられそうです。夜にはスンドゥブに10皿もの小皿がついた「韓定食デラックス(2300円)」を始めいろいろな定食や一品が登場し、お酒も飲めるそう。あぁ?、いいなぁ?。主人ならきっと、くっと呑んで、がつがつスンドゥブ食べて、「いやー、うまかったぁ」っとしたいだろうなぁ・・・とつい想像してしまいました。というわけで、アメリカにお住まいのスンドゥブファンの皆さん、どうぞご安心を。帰国になっても、大阪は新地に行けば、あのスンドゥブが食べられますよ!!
白釜飯 韓国純豆腐火鍋 まん馬(MAMMA)
大阪市北区曽根崎新地2-4-19
tel:06-6344-4448
(四ツ橋筋と新地本通りの角を西へ、ホテルサンガーデン堂島の隣)
年中無休 24時間営業すんどぅーふ定食850円(昼100円引き) 他
(たんぽぽ2005年3,4月号)
